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昭和53年6月12日の夕方。
仙台市内は大地震に見舞われました。
「1978年 宮城県沖地震」です。
多数の建物が倒壊しましたが、
緑ヶ丘エリアや鶴ヶ谷・南光台などの住宅地、
苦竹、六郷・七郷、そして長町エリアと、
このエリアに被害が集中し、地盤の変形などの
「地盤災害」と言われました。
苦竹付近では地盤沈下が起こりました。
地盤沈下は、いわゆる「軟弱地盤」で発生しやすく、
地下水が地上に向かって浮き上がってきた事により
発生することが多いです。
八木山近くでは金剛沢エリア・大年寺山付近、
過去60年くらいの間で大きな「地すべり」か起こっています。
向山や八木山では、亜炭坑の陥没も問題になった事があります。
これらのすべては「地盤」というモノが関係しています。
そのうちの「地すべり」に関しては、
よく知られる地盤災害の一つですね。
八木山エリア付近で有名な場所は「野草園」です。
野草園の地すべりは、昭和20年に始まり
昭和23年の豪雨の際に東西300メートル近くに渡って
崩壊が起きました。
こういう事から野草園では「パイプひずみ計」という
地下の地すべり面を計測する機械が設置されていて、
近隣住民へ危険を知らせる役割も担っています。
金剛沢市有林・青葉山の南東でも、昭和26年9月の豪雨の際に
地すべりが発生し、住宅2棟を押し潰し、
死者2名が出ています。
それ以来、このエリアは何度か地すべりを繰り返していましたが、
現在では対策工事も行われており、
今ではほとんど動きが止まっています。
この野草園と金剛沢の地すべりは、以前の「地層」で記した
「大年寺層」と「青葉山層」が関係しています。
「大年寺層」と「八木山層」は、水を通しにくい不透過層で、
締まりがよいという事は、これまで記載したとおりです。
この大年寺層の上にある、今の地表面に一番近い上の層、
「青葉山層」が、水を通しやすい「透過層」で、
しかも地下水の通り道になっている層です。
地すべりは、この「大年寺層」と「青葉山層」の
境界線が滑った事により発生したものでした。
青葉山層は、大年寺層・八木山層の上に「不整合」に
覆われているために引き起こされました。
さらに野草園の地すべりに関しては、
前回の「長町利府断層」「大年寺山断層」の
運動によって「上昇した地点」で起こっていて、
「大年寺山断層の真上」でした。
緑ヶ丘3丁目にある「松が丘ゴルフクラブ」他一帯は、
この野草園の地すべり跡を整地して造られました。
今の住宅地などは、
凹凸のある地形を切り取って、埋め立てて平坦にし、
盛土・埋土によって「人工地盤」で築かれている場所が多いです。
仙台市内も例外ではなく、
「人が造った層」ということで「人積層」という地層の一つとして
扱わなくてはならないほどの状態になっています。
この「人工地盤」によって、
上記の「宮城県沖地震」で大きな被害が出たのが「緑ヶ丘エリア」です。
緑ヶ丘エリアの地形は、およそ1万年前に出来上がった形で、
大年寺山・緑ヶ丘・三神峯と続く地形の一部です。
これらは地殻変動によって出来たものです。
宮城県沖地震では、
特に緑ヶ丘の一部の場所、昔の地すべりを伴った浸食によって
出来た谷を埋めて、急な斜面を切り盛りして造った住宅地に
被害が発生しました。
緑ヶ丘1丁目の南側は「盛土」で、
他は谷を埋め立てた「埋谷」です。
埋土・切土の境目に亀裂が発生し、
もっとも亀裂が進行したのが緑ヶ丘3丁目のエリアで、
本格的な地すべりの手前で停止した経緯があります。
ストップしたのは、幸運だったでしょう。
この宮城県沖地震の昭和53年は、雨が少ない年でした。
この地震の直前付近は、雨が降っていなかったのです。
そのため地盤が乾燥していて、
仙台の至る所の丘陵地の人工地盤の住宅地は、
地すべりが始まった段階で止まったのです。
緑ヶ丘も、その例の一つです。
この時、大雨が降っていた後に地震が起きていたら、
もっと大惨事になっていたと言います。
住宅やアパートなどを新築する際、
よく「地盤」という事が出てくると思います。
「ベタ基礎」という、
住宅の「底板一面」が、
鉄筋の入ったコンクリートになっている基礎がありますね。
地盤に問題がない場合は、このベタ基礎を行い、
その上に住宅が造られます。
大半はこの工法です。
ただ、ある面が著しく沈下を起こすなど、
不均等に沈む「不同沈下」には強くありません。
これで訴訟になるケースは後を絶ちません。
ここで、「軟弱地盤」の場所については、
「鋼管杭」など、円柱の管を何本も地中に打設し
地盤を固める/強くするという工法をすると、
沈下を防ぐ事が出来ます。
見方を変えると、
「鋼管杭を入れなくてはならない場所は、地盤が弱い」
ということにもなります。
ただ、強い地盤なのに「弱い」とウソついて、
高い金額がかる杭基礎を押してくる業社も多いので
注意して下さいね。
ちなみにこの軟弱地盤は、「人工地盤」ではなく、
その下の「長い歴史を重ねた地層地盤」の事を言いますが、
液状化現象などが起きやすい「埋め立て地」に関しては、
元々海などを埋め立てた「人工地盤」が多く、
基本的に「軟弱地盤」が多いです。
八木山エリアの1戸建て住宅に杭を打ち込んだという
調べはしていないですが、
杭を打ち込まなくてはならない地盤ではないはずです。
大半がベタ基礎だと思います。
ネックは「炭坑跡」の方でしょう・・。
杭を打ち込んでも、地中が空洞の場所が多いですので・・。
ちなみに、地下鉄東西線の工事の八木山動物公園付近、
動物公園駅の地下の床版部、
いわゆる電車が乗っかる床の部分の下は、
上記の「ベタ基礎」で行われています。
仮にこの辺りの地盤が弱いと判断された場合は、
杭基礎になるはずなんですが、ベタ基礎で工事するという事は、
やはり地盤は強いという事なんでしょう。
こういう所からも、地盤の強い弱いは見えるんですね。
TBC東北放送さんの鉄塔・アンテナを建設する際にも
亜炭坑の関係もあり、地盤の検査を行っていますが、
問題がなかったそうです。
「地盤」というテーマで記事にしてみましたが、
これだけでも、過去の事も含めても出てきますね。
特に八木山エリアは「山」ですので、
「地盤」は結構重要なポイントだと思います。
ただ、それこそ住宅を買うなどの時に、
地盤まで気にする人はどれだけいるのか分かりませんが、
家の造りだけを見ていると、しっぺ返しを食らう事も
多いのでは思います。
こういう地盤は、知っているに越した事はないですね。
これまでの地形に至る記事に関して、
資料として「仙台の地学」等を参考させて頂きました。
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